岩手、宮城、福島3県にある東日本大震災の伝承施設や伝承団体に、活動の現状や課題を聞いた2020年の調査報告が、まとまった。施設の来館者数は、合計69万5千人で前年から27%減。語り部や現地案内などの震災学習プログラム参加者数は、6万5千人で59%減と、コロナ禍の影響を大きく受けている。
公益社団法人3・11みらいサポート(石巻市)が、28の伝承施設の運営団体、27の学習プログラム実施団体に聞き取りをしてまとめた。施設の一部で震災関連展示をしているところを含む。20年に新設された施設も数カ所ある。
伝承施設は震災後、各地に新設され、来館者数の合計は年々増えた。19年に95万6千人に達したが、20年3月以降は毎月前年割れが続き、特に4、5月は1割台に激減。8月以降は、7~9割程度まで回復している。昨年最も多かったのは岩手県陸前高田市の東日本大震災津波伝承館(いわてTSUNAMIメモリアル)で、約19万人が訪れた。
一方、震災学習プログラムの参加者数のピークは震災2年後の13年で、25万7千人。その後年々減っていたところに、コロナ禍が襲った。20年3~6月は前年の1割未満~1割台だったが、10、11月には8割台に回復し、12月は前年を上回った。
昨年は、修学旅行を延期し、行き先も首都圏などから近隣地に切り替えた学校が多かった。その結果、これまで少なかった冬の移動先として、被災地の語り部学習などが選ばれたようだという。
多くの団体が今後の継続に不安があるとし、国や自治体の財源を期待する声もあった。
調査では、伝承施設への改善要望も聞いた。行政の展示施設に対し、事前の防災や発災対応などの「失敗や反省の発信追加」「子ども向けの展示の工夫」を求める団体や、地域の展示施設に「地域の語り部を支援・育成する機能」「学校教育での活用」を望む団体が多かった。(石橋英昭)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル